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2021.03.05

J2netが見てきたインドネシアの図書事情23年

 <J2netが見て来たインドネシア図書事情23年>

◆はじまり
1998年5月インドネシアではクーデターによる暴動が起きました。
それまでの政権はスハルト大統領によって治められ、独裁的な政治を30年余り続けてきました。自由な発言は規制され出版物も検閲を受け、政府に異議を申し立てる者は捕らえられました。ジャカルタで知り合ったストリートチルドレンを支援するヤヤサンスタッフの一人も捕まった事があると話してくれました。
私たちがジャカルタでJ2netを立ち上げた1999年頃は、まだその名残りもあり本屋さんに並ぶ本は限られたものでした。その状態を見て私たちも子どもたちに本を読んでもらいたいと、日本の古本を翻訳して寄付する活動を始めとし、様々な形で子どもたちへ本を届け始めました。
◆当時のインドネシアの状況
学校へ訪問した時は、必ず図書室を見せてもらいました。最初の頃はひどい状態でした。たいていの学校の図書室が埃だらけで、棚に置いてあるのは使い古した教科書やドリルの様なものばかり。教科書がひとり一冊とは限らなかったのです。どこを探しても図鑑や絵本・物語などの読み物は無く、学校の先生は図書室と呼びますが、本の倉庫のようでした。
本屋さんに児童書は少なく、あっても外国からの英語の本やインドネシア語訳文と並列の絵本。しかも高価です。公営の図書館もありましたが、日本に比べれば遥かに少なく誰もが利用できる訳ではありませんでした。政府は読書活動を推進する事は無く、国民も読書への意識が薄くなっていました。
そして大きな問題として、経済格差があります。多くの人たちが本の大事さを知る事も無く、またたとえ知っていて本屋さんに本が並んでいたとしても、買うのは難しい状況の家庭が多かったのです。
私はインドネシアの読書を推進する団体に加わり、おはなしや本の普及活動に参加しました。
そのグループでは、長期入院している貧しい家庭の子どもたちの病棟へ2週間に一度訪問し、お話や読み聞かせをしていました。
ある日、絵本の読み聞かせをした時、患者のお母さんから「その本はどこで売っているのですか?」と聞かれました。私はびっくりしました。現地で買った小さくて薄くて安い本だったのですが、ここにいるお母さんたちは本がどこで売っているのかも知らなかったのです。たとえ本屋を知っていたとしても、私たちにとっては安い本でも、このお母さんには買えなかったのかもしれません。
◆がんばる現地の人々
私が加わっていた団体の主宰者はインドネシアでも児童図書の第一任者と言われていた方で、選りすぐりのインドネシア民話本を何冊も製作しセットにして各地の学校へ寄付したり、バイク図書館の寄贈など図書推進の活動を行なっていました。その団体に関わる方で自宅の一部を図書室として開放している人がおり、訪問した際子どもたちがたくさん来て本を読んだり宿題をしたりしている姿は、素晴らしい光景でした。
また、インドネシア大学で教授をしていた方が引退され、お住いの地域の一軒家を借り図書館活動をしていました。J2もこちらの図書館とは様々な形で相互協力を行なっていました。
モスクを管理する方が、その横に小さな部屋を建て壁に本棚を作り、貸出までしていた民間の図書館もありました。
ユニークな移動図書館として、馬の世話をしている農村地区のスリルおじさんが、2015年頃から空いている時間を使って馬の背の両側に木箱を背負わせ、子どもたちの学校や村を廻る活動を始めました。その頃は、政府も図書推進に力を入れ始めており、寄付のために古本を送る際の送料を無料化したりしていました。おじさんの馬の移動図書館が有名になり、大統領にお呼ばれしたとのことです。NHKのドキュメント番組で放映されました。
これらの方達のように、ご自身が本の大切さを認識された知識人の方々、町の有識者などが独自で小さくても図書館を作り、地域の子どもたちや住民のために図書館を作り開放しています。
ある意味インドネシアでは政府より、「なんとかしなくちゃ!」と思ういろんな立場の人々が大小様々な図書館(taman baca)を作り上げて来たのかもしれません。
◆“ Taman Baca (読書の広場)”
街の小さな図書館の事です。
Taman は公園や広場、Baca は読む。
Taman Baca Anak 子ども(anak)を付けると子どもの図書館。
Taman Baca Masyarakat 市民 (Masyarakat)を付けると住民たちの図書館。
最近では、J2も関わっているスリブサトブク(1001buku)のようなボランテイアの図書支援団体も増えており、古本・寄付本を集めて各地の市民図書館へ送っている団体もあります。
現在ジャカルタでは翻訳活動はしていませんが、J2ネットジャパンでは翻訳絵本、さらに翻訳本増刷活動を続けており、日本からそのような団体を通して、Taman Baca Anakへ本を届け始めています。
J2netジャカルタでは、Bibit文庫という名でいくつかの学校や個人のお宅に文庫を設置しました。さらにバイク移動図書館を作り、プンチャックの農村地域に贈りました。J2netが開催したセミナーに図書関係者を招待したり、また外部セミナーに参加した際には、遠くカリマンタンの図書館運営者からも、本を届けて欲しいと依頼されました。
J2netが絵本のセミナーを開いた時、参加された出版社の方から意見を求められたこともありました。突撃訪問で、出版社に「こんな本を作り続けて欲しい!」と掛け合ったこともあります。
◆これからのインドネシア図書の未来は?
インドネシアも政府のトップが変わっていく事により、学校の図書室も少しずつではありますが変わってきました。最近では小学校にも司書が配置され、子どもたちへの読書推進に努めているようです。
政治や経済が安定してくると、本屋さんも良い本を出版してくれるようになったのですが、どんどん売れる本ばかりに偏る傾向があり、私たちが求める本が数ヶ月後にはもうブックフェアなどで安売りされているような状況もあります。
2017年国立図書館が移転し、新しく建てられたビルは地下3階、地上24階建ての世界一高い国立図書館となりました。ロビーホールは4階までの吹き抜け。4階まで続く高さの本棚は圧巻でした。
11月オープニングのこけら落としイベントがあり、J2net人形劇グループも呼ばれ参加したのですが、ロビーホールと児童図書室で人形劇を行い子どもたちや保護者、図書館員などからも喜ばれました。
J2netの活動と一緒にインドネシアの発展を見つめてきました。
でも、発展だけではなく発展できない部分、間違った発展も同時に見てきました。私たちの力では動かないものばかりですが、私たちでなければできないこともあるはずです。
これからも、インドネシアの子どもたちの楽しみのひとつとして本に親しんでもらうためにも、インドネシアでは買えない本を送り続けられたら嬉しいです!
◆日本でも
コロナ禍中において、今まで外で仕事をしていた親が、子どもたちとのおうち時間を飽きさせずに過ごすにはどうすれば良いかと思案してか、最近絵本が見直され売上が伸びているそうです。子どもたちは本に興味がわけば、本当に時間を忘れて夢中になります。本に夢中になる事で、私たちは様々なことを身に付けることが出来ます。
素晴らしい教えや気づきを与えてくれ、楽しみでもあり、人間を豊かに育むツールなのだと思います。
(Hori)

2016.05.06

Bibit-Bunko 新しい本を文庫に配布

J2net1グループとして活動している「Bibit-Bunko」からの報告です。

 Bibit-Bunkoの名前はインドネシア語の「Bibit 芽」と日本語の「Bunko 文庫」から成り立っています。活動目的は「子どもの集まる場所に文庫を設置し、子どもが本を読める環境を作り、周囲の大人たちへも本の重要性を理解してもらえるよう働きかける」ことです。

Bibit-Bunkoが活動を始めたのは20064月。日本の「()ひろしま・祈りの石国際教育交流財団」から受けた助成金で本を購入しました。それまでJ2netのメンバーはいろいろな活動を通して、インドネシアの子どもたちが本に接する機会が少ないことに気付いていました。そこにこういったチャンスが巡ってきたのです。

活動を始めるに当たり、まず文庫を設ける場所10か所を選びました。

障がいのある子や孤児の施設、設備の整っていない小学校、地元の方が自宅を開放して子どもたちの居場所を提供しているところ。これら10か所の責任者に集まってもらい、文庫の役割、管理・運営方法、読み聞かせや紙芝居についてなど、セミナーを開きました。そして文庫1カ所につき250から300冊の本を届けることができました。

 それからほぼ10年。昨年末、「P.T. TOSO INDONESIA」からCSRの一環としてBibit-Bunkoに多額の助成金をいただきました。おかげさまで、1000冊弱ほどの本を購入することができました。

もちろんそれぞれの文庫には調査に行き、今どんなふうに運営されているか、本の傷み具合、子どもたちが良く読んでいる本、まったく読まれていない本、今後どんな本が読みたいか等インタビューをしました。そして選んだ本は、絵本、小さな子ども向けの読み物、本に不慣れな子へ導入の役割を果たしてくれる有名キャラクターの本、飛び出す絵本、小学生向けの物語、地図、科学の本、施設スタッフや保護者用に大人向けの読み物、手芸・料理・服飾関係の本など。1冊1冊にスタンプを押し、配布先ごとに仕分け、そしていよいよ配布です。

・「Yayasan Nur Abadi」は聴覚障がい者特別支援学校で、新メンバーを含め5名で伺いました。所在地はパサールミング。図書室が整備されていて、子どもたちは良く本を読んでいます。今回は子どもたちの本をたっぷり、送り迎えにみえるお母さんやスタッフが読める本も併せて届けました。

・「Yayasan Aulia」は北ジャカルタで貧しい地域の子どもたちに移動文庫活動などを行っているNGOです。毎週決まった曜日、決まった場所、車で行けない所にはバイクで入って行きます。バイクだと3つの布袋が精いっぱいで、その中に本を詰め込み子どもたちのところまで。貸出ノートを作り、読み聞かせも行っています。絵本や読み物、スタッフ用の本も届けました

。・「Perumahan Ibu Ani Husni」。ビンタロの住宅地で自宅を開放し、近隣の子どもたちがそこでイスラム教の勉強をしています。今回、新しい本をとても喜んでくれました。送り迎えのお母さんたちに読んでもらえる本も届けました。

・「Yayasan KDM」。ストリートチルドレンを保護し自立を支援する施設です。勉学、共同生活、職業訓練の施設を備えています。
・「三輪バイク移動図書館」。20145月、チアンジュール方面の農村地区で活動を開始しました。狭い道にはバイクが有効です。

・プンチャック方面の小学校3校には、読み物、図鑑や科学系の本などを中心に届けます。

これらの場所に新しい本が届いた時の子どもたちの顔、その本を読む子どもたちの姿を想像すると嬉しくなります。

本を読めば知識が得られます。でもそれだけではなく、考える力、想像する力、困難に立ち向かう勇気、将来への希望、生きていくための知恵などが子どもたちの中に芽生えます。それが大きな木になるのをじっと見守りたいものです。

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