日本ニュース

2016.02.05

インドネシア熱帯林再生スタディーツアー報告

 以前から J2netの活動に賛同して下さり、昨年は助成金をいただいた三井住友海上火災保険株式会社様から、「会社の CSR 活動として行っているインドネシア・パリヤン野生動物保護林の森林修復と再生の取り組みを見学するスタディーツアーを開催しますので、いらっしゃいませんか」とお誘いいただき、昨年 11 月、『インドネシア熱帯林再生体験・地元小学生との交流ツアー』 に参加してきました。

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 パリヤン野生動物保護林は、地元の農民たちが家畜のえさにしたり、自らの農地とするために見境なく木を伐採し続けた結果、荒廃地となっていた森林を、三井住友海上が修復と再生に継続的に取り組み、 その結果 10 年間で 350ha に 30 万本の樹木が定着し、本来の生態系の再生も確認されてきて、「 これこそ森林修復の見本!」という評価を受けているそうです。スタディーツアーのパンフレットに掲載されていた、森林の再生の様子を示した写真があまりに素晴らしくて、ぜひこの目で実際を見てみたいと出 かけていきました。

 ツアーの最初のプログラムは、熱帯林再生活動に直接携わっている方達からの活動報告会。ジョグジャカルタから車で 1 時間半余り走った、保護林の中の風通しのよいセミナーハウスで実施されました。机 の上には、いかにもインドネシアのセミナーにおける『おもてなし』らしいシンコンやバナナ、落花生 を茹でたものが用意されていて、日本では滅多に食べることができないドリアン、マンゴスチンなどの フルーツ、懐かしいナシコタック(紙箱に入ったお弁当)などもいただきながらの和やかな会でした。

 紙使用量が多い保険業にとって、紙資源の森林を増やしていくことは使命だと考えプロジェクトをスタートさせたという三井住友海上さんから、最初にプロジェクトの概要について説明があったのち、今回 のプロジェクトをサポートしてきた住友林業さん、そして現地で農民の指導に携わってきたインドネシア林業省の方、森林再生の状況を定期的に調査確認し報告しているガジャマダ大学の先生方、実際に植林事業に携わっている現地農業組合の方々から、実際にどのような活動を行ってきたかを、通訳の方を 通して日本語で、詳しくお話を伺いました。

 

 中でも一番印象に残っているのは、インドネシア林業省 No2のアニーさんのお話でした。アニーさんは千葉大学を卒業され、博士号も取得されている方です。今回のプロジェクトでは、森林破壊の元凶であった地元の農民を植林活動のために雇用するとともに、彼らの生活向上の為に、農業指導 を行なってきました。農民達に新しい農業のやり方と共に、常に考え、工夫し、記録を残しておく事を教え、それによって彼らの収入をそれまでの 10 倍以上に伸ばしてきたそうです。 その話を聞いた時、胸が震えました。ジャカルタに住んでいた頃、 小学校を訪問すると、1 年生はたくさんいるけど、読み書きさえできれば十分だと、家の手伝いをさせる為に辞めさせる親も多く、 6 年生は半分ほどになっているという事がよくありました。でも 学ぶ事の大切さを理解した親達は、きっと子ども達の教育にも力を入れてくれる事でしょう。今回のプロジェクトはそんなふうに、 農民たちだけでなく、その子どもたちの輝く未来も育てているのだととてもうれしくなりました。

 そのあと、農民の皆さんから直接、唐辛子栽培のレクチャーを受けました。唐辛子はプロジェクトが換金作物として農民たちに奨励したものだそうです。自分たちが学び、実行しているさまざま な工夫を、誇らしげに語っているその姿に、自分たちで考えて行動する自立した人間としてのたくましさを感じました。

 

実際に植林活動にも参加させていただきました。生物多様性に配 慮し、ローカル樹種である チーク、マホガニー、フランボヤン等の様々な苗木を、参加者全員で 200 本近く植樹しました。私たちが植樹した木々が、たく さんの動物、鳥や昆虫が集まる、多様な森に育っていきますよう に!との願いを込めて。

 翌日は再生した森の中のトレッキングと、地元の小学校訪問。 少し小高い丘の上には、10 年前の木がほとんどない時の写真が 掲示されていて、それと眼の前に広がる風景を見比べることで、 森林が再生している様子を実感することができました。インドネシアでも最近、環境教育が盛んになってきているとのことで、で きるだけたくさんの人達にパリヤンの森の再生事業について知 ってもらいたいと、トレッキングコースの整備を進めているそう です。

 掃除が行き届いてきれいな小学校では、子どもたちが鼓笛隊で迎 えてくれました。このあたりでも特に芸術教育に力を入れている 学校として、近隣から注目を集めてきているとのことで、日ごろの成果を発揮した発表では、子ども達 の生き生きした楽しげな様子が印象的でした。森林再生プロジェクトの一環として、地域の学校への寄 付も行っていたこともあり、スタディーツアーが始まった昨年から、参加者達が小学校を訪問し、子ど もたちとの交流を行うようになったそうです。今回も、竹とんぼ、あやとりをはじめ、大縄、シャボン玉、折り紙など、参加者が思い思いに準備した遊びを、子ども達と一緒に楽しみました。

 金額的な援助に加えて、実際に学校 を訪問して直接子ども達と交流し、 彼らのことを気にしているんだということを伝えるのはとても良い ことですね。校長先生のお話からは、 自分たちが外国人から注目されて いる特別な存在なのだと感じるこ とで、その期待に応えようとがんば って、学校全体が良い方向に向かっ ていき、それが周りの学校にも刺激 となり、地域全体が底上げされてい くという、プラスのスパイラルが広がっている様子が見て取れました。

 スタディーツアーとは一体どんなものなんだ ろうと、興味津々で参加した今回のツアーでしたが、森林修復の取り組みについての報告会あり、植林や農業体験あり、小学校訪問ありと、 盛りだくさんでかなりハードなスケジュールでしたが、その分満足感も非常に高いものでし た。何年かのち、自分が植えた木が根付いて大きく成長している様子を見に、また訪れたいと強く思っています。(日本側 山本)

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